気づけば不動産業界の人

成り行きで不動産を仕事にして早20年。賃貸管理、収益物件の売買仲介、自分の物件で民泊運営など、気が小さいのにいろいろ経験しています。

【ヴィンテージと築古は紙一重】ヴィンテージマンションは好きですか?

知合いが都内にヴィンテージマンション(分譲区分)を持っている。

築50年以上という、東京にマンションが建ち始めた頃の物件で、その立地もあり、新築当時は、野球選手・女優・政治家が住んでいたそうだ。

時は流れ2010年に知合いが購入したとき、往年の高級マンションは、「ヴィンテージ・マンション」という立ち位置になっていた。

高級からヴィンテージなので、建物は歴史を重ね、分譲で住み続けている人々は高齢化(一部は超高齢化)、分譲賃貸には、こういう味を好む人々が住んでいるという状態。

 

先日、物件を見に行ったところ、パッと見の外観はこぎれいで、なんともいえないどっしり・ゆったりとした重厚感がある。

マンションの銘板の文字は、レトロなカタカナ。

外観に使われている素材(今は廃番のタイル)、エントランスのやけにゆったりしたサイズ感、やたらと広い廊下の幅のおかげで、効率重視の今どきのマンションにはない余裕が感じられる。

こういうところがヴィンテージなのか。

 

設備に関しては、オートロック、宅配ボックス、フリーwifi、24時間ゴミ置場、など今どきのものはなし。

その代わり、玄関ドアに牛乳配達や新聞配達を受ける口?がある。

窓(サッシ)が小さく、天井高もやや低い。排水に難があるようで、高圧洗浄をかけても管自体が細いのか、風呂の排水がゆっくり(遅い)という。

これらは建物由来だが、管理面も独特で、賃貸で入居した人も管理組合の理事長に挨拶に行かなければならないとか、集合ポストに貼る名前ラベルを作成するのは管理組合とか、いくつかルールがあるそうだ。

 

そんな物件だが、知合いは、この部屋を結構な賃料(相場より高い)で出して、あっさり申し込みが入ったと告げ、「申し込みが4番手までいた」「もっと高く出してもよかった」とぶつぶつつぶやいていた。

どんな人がこういう物件に興味をもつのだろう。

立地はまずまずだが、ちょっと不便でちょっと高い物件をあえて選ぶ理由とは?

一番多いのは、デザイン関係の人(今回成約した人はプロダクトデザイナー)、次は在宅勤務の人(IT系や自営)、外国人/駐在員(米国かヨーロッパ)とのこと。

 

物件を一緒に見に行ったアシスタント氏は、「宅配ボックスない物件無理」「理事長に氏名とか個人情報渡すの絶対嫌」と言っていた。

彼にとっては、ただの築古マンション。

ヴィンテージと築古、結局はその人の価値観によるのだが、不動産に係わる身としては、できるだけ古さを活かして多くの人が住みたいと思う物件にしていきたいと思う。